「持続可能性という点でヘンプはファッションの未来の生地だ」米国ファッション市場とヘンプの現在その①

「持続可能性という点でヘンプはファッションの未来の生地だ」米国ファッション市場とヘンプの現在その①

「ヘンプはファッションの未来の生地―持続可能性を追求する中で注目を浴びる」

持続可能性に焦点を当てるならば、ヘンプこそがファッション業界の未来を担う生地素材と言えるでしょう。英文記事(2019年)『When It Comes to Sustainability, Hemp Is The Fabric of Fashion's Future』から、重要なポイントを抄訳しました。

2018年の米国農業法改定により、米国内での「産業用大麻」栽培が合法化され、産業化が進む可能性があります。

・この産業用大麻の合法化は、農家が政府の補助金を受けながら栽培を行い、分野を多様化する機会が得られるため、広範な影響を与える可能性があります。

・将来的にはヘンプの栽培拡大とファッション業界での利用が、米国の綿花産業に影響を及ぼすかもしれません。

・綿花は単一栽培農業であり、輪作作物を導入せずに生産を繰り返すため、土壌の劣化や不毛化が進んでしまいます。

・現在流通している綿花のほとんどは遺伝子組み換えされており、害虫対策のために変異したゲノムが植物の成熟後も土壌中に残り、生物多様性の減少につながることが研究で示されています。

・綿花の生産には膨大な量の水が必要であり、1キログラムあたり約8,000リットルの水を使用します。また、綿花の生産には全世界の殺虫剤の16%と農薬の6%が使用されています。

・一方、ヘンプの生産では、水の使用量は綿花の3分の1以下であり、繊維の生産量は220%増加します。また、ヘンプは多くの農薬を必要とせず、水質汚染や隣接する土壌の酸性化を効果的に軽減する特性を持っています。

・ヘンプは輪作作物として機能し、有毒物質を分解するだけでなく、CO2を吸収することにより大気の質を改善し、土地の改善にも寄与します。

このように、綿花栽培の環境への影響や持続可能性への取り組みが注目される中、ヘンプの栽培と利用は、ファッション業界において革新的な未来を築く可能性を秘めています。

解説) 米国の綿花栽培とその産業ビジネスはコットン世界市場を長年支配・占有しています(これは米国の歴史と深く関わります。ネイティブアメリカンからの収奪。奴隷解放など)。米国にとって、国内農業市場の約25%を占め、歴史的にも同業界団体は議会へ多くの政治家を送り込んでいます。

ですが、この綿花栽培が環境に大きな影響を及ぼしていることは、広く知られるようになりました。

例えば、ロッキー山脈の東側に大きな綿花産地がありますが、その山脈のから湧き出る地下水脈をくみ上げ続けて、ある調査によるとその60%を使ってしまったと指摘されています。いつか枯渇するのではと危惧されていても、まだ見直しは行われていません。

またモノアグリにより、土地が痩せていくことは綿花栽培の特徴で、以前は土地が痩せるたびに、栽培畑を移転させていた歴史があります(そのほとんどはネイティブアメリカンの土地を収奪しています)。

上記の詳しい内容は「綿の帝国-グローバル資本主義はいかに生まれたか」(S・ベッカート著)他等に多くの記述があります。https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314011952

上述の状況で「ヘンプ栽培が米国に回帰」という事は、同国へ大きなインパクトになることは必至です。実際に米国内では、マリファナ(THC成分)からヘンプ(産業用大麻)まで、新しい経済として幅広く議論されています。

ですが多くの障害があることも事実です。そういった現代の状況を考えるために、この半世紀ほどの「米国産業とヘンプ農業の歴史」を、同記事は顧みます。

その②に続く。

 注1)記事には「ヘンプの生産では、必要な水の量がコットンの 3 分の 1 以下」とありますが、実際は雨水だけで成長しますので水資源はゼロです。

注2)記事には「繊維の生産量(バイオマス)は 220% 増加します」とありますが、300%以上とも報告があります。栽培環境に依ります。

 weavearthは、マリファナ(THC高含量)と産業用ヘンプを法律的に「切り分け」た上で、新しい農業産業両分野での活用するために、後者の産業用ヘンプ(THCが0.3%以下)として栽培を促進することを支持しています。

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