芭蕉布プロジェクト(第二回:紅露工房に石垣昭子さんを訪ねて/その②)

芭蕉布プロジェクト(第二回:紅露工房に石垣昭子さんを訪ねて/その②)

“本当に作る必要がある人が、
本当に必要な分だけを自然界から頂く”

石垣昭子さんから頂いた最も心に残る言葉。今も思い起こします。

 多くの日本を代表するファッションクリエイターが、この工房を訪ねてきました。そのそれぞれの理由は知るすべはありません。ですが、お洋服の原点は生地作りにあり、さらに糸づくりがあります。その上で、かつて人々は染色をする技を磨いてきました。「人の手がつくる」ことの意味を宿している昭子さんのモノづくり。その思いや願いは、現代の衣料品産業で失った感覚。多くの学びに満ちています。

(紅露工房の機機)

 芭蕉布、そして植物繊維のこれから

現在多くの繊維製品は、ポリエステルに代表される石油由来の素材で作られています。安定した安価で丈夫で扱いやすいこの石油由来繊維は、わたしたちに便利さとカラフルなお洋服を安く提供することに成功しました。けれども、それが大量廃棄を前提として生産する大きな背景です。

ファッション産業の過剰な生産と廃棄は現在人類史的な大きな問題として認識されるようになりました。欧州ではEPR(拡大製造者責任)が導入されて、状況を改善する取り組みが始まります。

そういった潮流は、植物繊維への注目を高めています。

芭蕉布だけでなく、リネン(亜麻)ヘンプ(大麻)アバカ(マニラ麻)など人類がポリエステル繊維を使う前に、暮らしを支えていたこれら繊維には、多くの忘れられた”豊かさ”が宿っていました。「自然環境と共に暮らす」その伝統を、石垣昭子さんとその工房には多くのことを見つけることが出来るのではないでしょうか?

(西表島紅露工房の糸芭蕉)

OISTでの芭蕉糸の開発は、廃棄を前提とする大量生産を目的とするものではありません。地域のコミュニティで繊維生産を最適化できるアイデアの一つだと思います。

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