サムネイル写真は「Seed Ball(シードボール)」(収穫後)。
この中に、Flaxの種が格納されています。
(2024年6月18日Threadsへ投稿した内容です)
「リネンが高騰している」というお話、お聞き及びの方も多いと思います。けれど、なぜなの?って理由は、ご存知でしょうか?
リネンとヘンプのプロフェッショナルとして、専門領域の事実をお伝えしておこうと思います。ご興味がございましたら(少々長文です)。
・安定しない収穫高
フランダース地域(北フランス+ベルギー+オランダ)がFlax(フラックス:リネンの原料植物)の栽培地域です。最も品質が高く、伝統ある世界最高の原料産地です。この地域で、ここ数年での計画されたFlax栽培面積は、約16万ヘクタール。農作物であるFlaxは毎年の収穫量と、中身の品質が異なります。つまり作付面積と収量・品質が、決して比例しないのです(豊作・不作がつきまとう)。例えば、昨年は約15万トン(Flax原料ベース)を収穫されたのですが、「繊維として品質が一定の維持できている」とされてたのが、そのうちの10万トン未満です。残りは産業資材(ペーパーやコンポジット)に使われました。
・世界需要の拡大
ここ10年でインドのリネン需要が爆発的に増えました。同国内にはリネン紡績が30年前にはいったん無くなっていました(中国からの輸入に転換された)。しかし、財閥が大きな投資をして、リネンシャツのブランドを国内で大キャンペーン。それが奏功して大規模リネン市場が生まれ、紡績が複数設立され、たくさんのFlax原料を必要とすることとなりました。インドのリネン市場は、非常に好況で原料が高価でも買い控えしない傾向です。
・気候変動の影響
気候変動については、欧州のFlax原料関係者の会議(Alliance for Linen and Hemp)でも取り上げられていて、影響が大きいことを共通認識しています。気候変動が起こす問題は、産地の温暖化だけではなく、変動による欧州中部での洪水で耕作地が台無しになる事例が増えているということ(フランダース地域は、欧州でも低い土地にあり、大きな川の河口に拡がっています)。
・ウクライナ・ロシアの戦争が長期化
実はウクライナ北部からベラルーシ南部は、もう一つのFlax原料産地です。ここの原料は、主にリトアニアから世界市場へ輸出されます。ご存知の通り、この産地の原料は…非常に困難な状況にあります。この産地の原料は、高級なリネン糸にはなりません(多くは太い番手で織られるキャンバスやカーテン)。ですが、この領域で供給がストップしたことは、フランダース地域に原料供給への要求が偏ってきます。
・流通在庫の消失
2010年代までは、昨年収穫したFlax原料を持ち越して活用する一定の流通段階での在庫が存在しました。それがコロナ禍での市場における在庫調整進んで、コロナ禍後には、いわゆる在庫バッファが無い状態になっていました。
日本から価格を見た場合は、申し上げるまでもなく円安にあるという事が大きな問題です。では今後、このリネン市場はどうなっていくのでしょうか…?私たちの見立てを、後日スレッドを変えて書きたいと思います。
(2024年6月18日Threadsへ投稿した内容です)