”フレンチリネン”にまつわるお話(Threadsの投稿まとめ)

”フレンチリネン”にまつわるお話(Threadsの投稿まとめ)

サムネイルの写真は「Flax Sliver(フラックススライバー)」。原料に櫛掻きをして整えたFlax原料。これに撚りをかけてリネン糸になります。

(以下は2024年6月17日Threadsに投稿した内容です)

「これってフレンチリネンなんですか?」
たびたび聞かれる質問があります。リネン+ヘンプのプロフェッショナルとして申し上げているのは、「フレンチリネン」という銘柄は存在しないということです。意外に思われるかもしれませんね。

その理由は、専門業者には「Flax(フラックス)」と「Linen(リネン)」は、工程上で分別されている言葉だからです。農業セクターでFlaxはフランス北部が産地ですが、その多くは原料として輸出されて紡績工場で糸へ紡がれます(その多くは中国です)。Flaxは原料を整えて、撚りが掛けられて”Linen”になります。

つまり、糸になる前まではFlaxであり、フランスで紡績されていない限り、それはFlaxなのです(言い換えるとフレンチフラックスと言うのが適当な言葉になります)。

フレンチリネンというのがブランドであり品質を表すと思われているのは、おそらく「無印良品」の長年のリネンキャンペーンの影響だと思います。

もちろん世界で最も優良なFlaxがLinen原料として栽培されているのは、 北フランス+ベルギー+オランダには変わりありません。

ところが!近年、大きな変化が到来します。


長年(1990年代から)欧州のリネン紡績は、加工賃(人件費)の安価な国へ工場を移転しました。つまり、フランスでは糸づくりが失われた時期が30年近く続くことになります。

しかし、気候危機への意識が高まり、多くの分野でグローバリゼーションの弊害が生まれた認識から、「フランスでリネン紡績を再開してLinen 100% Made in Franceを復活させよう」という機運が生まれ、投資が集まり、若い世代の伝統麻紡織への関心を寄せるようになります。

その結果、新たな紡績工場が、最高級Flax原料の産地ノルマンディーに生まれることになりました。まさしく、正真正銘のフレンチリネンす。

lafrenchfilature.fr

こういった「繊維をもう一度国民の産業ために」といった潮流は、世界各地で始まっています。繊維は食品と同様に世界各地で安価な原料を志向するようになり、地域産業を破壊するだけでなく、その本質的な価値「暮らしと共に生きる布」を失いつつある…そういった危機感が生まれました。また気候危機への意識から、地産地消で温室効果ガスを抑制することが出来ます。時代の要請と言えるのかもしれません。

(2024年6月17日Threadsに投稿)

 

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