(サムネイルの写真は日本国内の試験農場でのフラックスの開花の様子)
リネンとヘンプは麻素材として一般的に知られています。一方、その他でもコーヒー袋(多くはジュート)、一部寝具の内綿(ラミー)も麻素材です。混同される場合も多いので、ここで一度整理をしてみましょう。
現代「麻」と呼ばれるものを、消費者庁の繊維製品品質表示規程(令和3年12月20日改正/令和4年1月1日施行)で見てみましょう。
植物繊維は「綿」「麻」「それ以外の植物繊維」に三分類になっています。「麻」は指定用語(表記できるのは)リネンとラミーのみで、ヘンプやジュートなどは、「植物繊維」として分類されます。
ですのでリネンとヘンプの表記は「麻(リネン)「植物繊維(ヘンプ)」が標準的な表現となります。
(詳しくは消費者庁のHP「繊維製品表示規程」を参照ください)
ではリネンとヘンプの「植物としての違い」を見ていきましょう。
<リネン(亜麻)>
(写真は日本国内の試験農場での収穫後のフラックス)
・原料は、フラックス(Flax)1.3mほどの背丈の植物です。
・産地(農業地域)は北フランス~ベルギー~オランダ(フランダース地域とも呼びます)とベラルーシ、中国の一部地域です。高品質な原料は、フランダース地域が中心です(中世からの原料集積地としてベルギーの街・コルトレイクが有名です)。
・取り出した繊維は非常に柔らかく艶やか、女性の髪の毛に例えられるくらい(「亜麻色の髪の乙女」は、このイメージからです)。
<ヘンプ(大麻)>
(画像は畑の上で寝かされ自然剥離を待つ収穫後のヘンプ)
・原料はカンナビス サティバ(Cannabis Sativa)2.0mに成長します。
・産地は(農業地域)は中国、南北アメリカ、欧州、オーストラリア他ですが、地域を選ばず栽培することが可能な植物です。
・取り出した繊維は非常に硬くまるで「木の皮」のようです。ですが精練(繊維を磨く)工程を通すことで、金色に輝くしなやかで柔らかな繊維原料になります。
(写真は表皮をはがしたヘンプ(Wikipediaより)。芯がありその周りが糸繊維原料になります:)
植物の生育長(1.3mと2.0m)の違いだけでなく、リネンとは違ってヘンプは中心部に硬い部分があることが植物の外観的に異なり特徴的です。
漢字で表現される”麻(あさ)”は、総じて「植物から取り出した繊維」の意味があります。麻の漢字の中にある「林」の部分は、「表皮を剥ぎ取る」象形とされていて、おそらく古代中国で漢字の字が出来たときには暮らしの中で「ヘンプ(大麻)」が栽培(もしくは自生を収穫)されており、その表面を「剥ぎ取る」行為を写し取ったものではないか…?と考えられています。現代では繊維製品表記でヘンプは「麻」と分類されていない…その漢字の「麻」の歴史を考えると不思議な気分です。
(大)