ヘンプストレッチジャージ開発

ヘンプストレッチジャージ開発

ご好評をいただいておりますTシャツ。開発に至るまでのストーリーをお話しいたします(2025年8月8日にメールマガジンに掲載した内容を再編集しています)。

コットナイズからロングファイバー 経験のない困難

ヘンプ素材のTシャツ。今までヘンプ製品の中でも市場には最も数多く流通しています。その多くが、コットナイズされたヘンプ素材にコットンを混ぜたミックスヤーン(混紡糸)です。

コットナイズ(Cottonized:綿化)と言うように、ヘンプ原料を綿のように細かい綿状の繊維に仕立てます。原料を切り刻んだ上に、脱脂を行い真っ白にさらされた原料は、見た目は綿と変わりません。結果、綿との相性が良く、ヘンプは混紡が以前は主流でした。

weavearthは、コットナイズドヘンプは採用せずに、繊維本来の特性を生かすためにロングファイバーヘンプで編地を開発することを決定、試験開発をスタートさせました(2020年頃)。

開発にあたっては、リネン素材の編地生産を参考にすることにいたしました。リネン素材Tシャツ用の編地は、実は日本群馬県が発祥です。歴史は新しく2008年頃に市場へ出てきました。

リネンもヘンプも、生の糸(Raw Whiteといいます)の状態では、硬い糸です。織物にするときには問題は無いのですが、伸びがなく硬い糸は、編地を形成するときのループになりにくい性質です。

以下は編地の模式図
(出典:https://www.wear-print.com/help/material.html)

 

ヘンプ糸を円滑に「ループ状にすること」

伸びがなく硬い糸を編み機械の中で高速にループにする…リネンの場合は、編み機の上で湿度を強制的に与える方法(霧吹きのイメージ)で対応していましたので、これをヘンプ編地に技術転用します。

しかし…結果は編めたことには編めたのですが、一部分がループになりません。ループにならない部分は、欠落して穴が空いてしまいます。製品化するには程遠いものでした。

編地工場の方々に色々な知恵をお借りして、編み上げるための調整を図り、ようやく一定の品質を維持することができるようになるまで、加えて1年半ほどを要します。

製品としての完成度を高めるベア天竺への挑戦

いったんヘンプ100%として編地は完成しますが、製品化には問題を宿していました。Tシャツに必要な「伸度」がないのです。編地が伸びたら、元に戻らないので、あっという間にヨレヨレになることが見通せました。

いつまでも綺麗に着用して頂くために考えられる、アプローチは一つでした。ループの間に、伸び縮みが出来る極細ポリウレタン糸を走らせる。それしかありません。

図の中でブルーの部分がポリウレタン糸(イメージ)

このポリウレタン糸は化学繊維(ポリエステル繊維の一種)ですので、製品に使用することには実は躊躇がありました。けれども製品の品位を保つために必須だということで譲歩することになります。

またこの工程を入れることで時間を要しましたが、出来上がった編地は唯一無二の品質。世界で初めて、ロングファイバーヘンプベア天竺の誕生です。

*ベア天竺:ストレッチ性を持っているTシャツ用生地

仕上げに施した特別な加工

布帛生地にも用いている特別な仕上げ方法を、この編地にも適用しました。布帛生地の柔らかさや艶やかさと同様な風合いで肌触りを高めたい意図がありました。

この加工に編地を適用する事例は少なく、少々冒険的なアプローチでもありましたが、結果的には大成功。麻素材とは思えないシルクのような上質な品質へと向上をすることになります。

日本の縫製技術

この生地の最後の難関は、編地が動きやすい、と言うことでした。肌触りのために柔らかく仕上げているため、生地の方向性を揃えて形に切る(裁断という縫製で最も技術が必要な工程のひとつ)ことが、大変難しいのです。

中国の縫製工場は、決して技術が低いわけではありません。しかし、Tシャツ生産に求められるのは「早く大量に安く」作ること。そのため、手間暇をかける製品は苦手な分野です。

そこで、お願いしたのは東京江戸川区にあるT&Tさん。以前より懇意にしていただいています。

T&Tさんは、カットソー生産では名門中の名門。リネンTシャツでも国内最高の縫製技術をお持ちで、ヘンプTシャツをお願いするならここしかない!そういった工場です。

製品縫製は丁寧の極み、本当に美しく仕上がってきており、素材から生産までの全てにこだわってきた私たちのプロダクトラインが完結した次第です。

多くのヘンプジャージとTシャツが国内流通している中で、私どもの製品は決して安くはありません。

けれども、数多くの知恵とエンジニアリング、そして日本の丁寧な技術対応力で、世界に先駆け、また世界に誇れる最高品質の製品を提供できていると思っております。

まだ、ロングファイバーヘンプでの編地領域は始まったばかりで、本当にブルーオーシャン。多くの方々の支持を得て、今後いろんなバリエーションをリリースする予定です。