ヘンプピローケースとクッションカバー MoNote#003

ヘンプピローケースとクッションカバー MoNote#003

ヘンプ素材を問い直す試み

weavearthが宿すミッションの一つが「ヘンプ素材の可能性を切り拓く」です。ヘンプ素材の紡績技術は2010年代に著しく発達してきましたが、それを織物にする技術や加工仕上げするノウハウは未開発のままでした。どうしても旧来のイメージ「硬くてゴワゴワ」(なのでそれまでは綿との混紡が多く、後述しますが実は使い込むと柔らかくなるのです)を覆すことが出来ないジレンマが続きました。このままだと単なる「リネン」「ラミー(苧麻)」の代替えとしか認知されません。

そこで私たちの麻素材に対する知恵と新しいアプローチを駆使して、ヘンプ素材のポテンシャルを引き出す開発に着手します。

かつての生地設計を参照し、様々なテストを繰り返しました。ですが出来てくる素材感は「ラミー」に近く、リネンのような「しなやか」で「豊かな」風合いに程遠い…独自性ある素材特性とは言えないテスト生地ばかりが出来上がってきました。

ヘンプ素材の本質

ヘンプは繊維として最も長い歴史を持っていて、日本では古来から「精麻」という技術でヘンプの繊維を磨き上げ、美しい織物を作り上げてきました。それは光沢があり、しなやかで、柔らかい布でした(しかも使い込めば更に柔らかくなります)。現代の最新紡績技術由来の布と古来の布紡ぎのギャップ、ここには繊維そのものの下地作り工程に関係していると考え至ります。それは「精麻」がインスピレーションを与えてくれました。

(写真は農家の納屋から見つかった約100年前の精麻されたヘンプ)

 現代にヘンプ素材がブレイクスルー

その「精麻」のインスピレーションから研究と開発を重ねました。多くの研究論文にあたっていくうちに、中国では1990年代からヘンプ素材は新素材として研究の対象となっていることを知り、多くを学びました。その成果として、初めて「ブレイクスルー」した素材として生まれたのが、「光沢感」「柔らかさ」「肌触り」「張りとコシ」「しなやかさ」を備え得た、このケースとカバーに使っているまるでシルクのような新時代のヘンプ素材。このブレイクスルーの時の感動が、weavearthを大きく前進させる確信に至っています。

この研究開発のストーリーはまた別途個別に語りたいと思います。

この新素材ヘンプを伝えるには

まるで「シルク」を触っているかの風合いを宿す生地を、どのように商品化すれば最善だろうか…?ドレスなどお洋服を作っても美しいのは間違いなさそうです。けれどもお洋服にすると、開発段階ゆえのコストが掛かり、広く手が届かなくなるかもしれません。最終的に決定したのは、素材感をダイレクトに味わうために直接肌に近い商品「ピローケース」「クッションカバー」に決めました。この商品を使っていただく方々が、この新素材ヘンプを日常で感じていただくことが、まず重要なメッセージになると考えて、販売価格も可能な限り抑制してしています。

ヘンプ素材を広く使っていただくことが、その農業の拡大へ繋がり、その農地の拡大は気候危機などの問題に対して有益なことは知られていかなくてはなりません。この需要の拡大にための役割を担ってほしいと願っています。

 (大)

 

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