中世からヨーロッパではリネンを日常の身近な布として大切に使われてきました。キッチンには受け継がれきたリネン布を収納するクローゼットがあるくらいです。野菜を保湿性があるリネン布にくるんで収納するのは一般的に行われてきました。
(オーストリアの農家に伝わるリネン布を収納するクローゼット「アルプスの谷に亜麻を紡いで」舟田詠子著より)
抗菌性能・保湿機能の再評価
現代になってリネンの抗菌性能と保湿性能に着目して、欧米でキッチン用品の開発がすすめられました。そのひとつが「ヴェジタブルストッカー」。石油由来のプラスティック製(ナイロン製)の収納袋から、リネン素材へ変えることで、繰り返し使えて、より野菜が長持ちする狙いで開発が進んでいます。
わたしたちも、この機能を活用して商品開発を進めました。抗菌性能は黄色ブドウ球菌の繁殖を観察することで明確にデータ化し確認が出来ます。結果は良好でした。また繰り返し行った試験で、数あるリネン生地の中でも最適な設計志向性も発見しました。
開発の限界
しかしながら…、「野菜を長持ちさせる評価」を科学的に証明する試験が建てつけられないことに至ります。野菜自体の個体差がある限り、明確なデータ化は容易ではありません。公的試験の設定が出来ないことが分かりました。
一方で料理専門家・研究家の皆さんのモニタリングも実施して、実際に「野菜が長持ちする」多くの好結果を得ました。しかし、これも個体差や保存環境に依存してることになりますので、残念ながら科学的根拠とは言えません。
しかし、 いつか必ず「リネン素材が野菜を長持ちさせる」プロセスを紐解いてみたいと思っています。
商品企画のディレクション(デザイン)
ヴェジタブルストッカーから発想を受けた商品企画は、モニタリング調査の反映を受けて、使いやすい「バッグ型」へ修正が施されました。ただ「野菜長持ち性能」をうたうことは辞めることにしました。苦渋の決断です。
ベーシックな型「リネンストッカー」(最上部の大きな写真)は、巾着型の3サイズ。これは用途は限定せずに保存袋からサイドバックまで使えるようなデザインになりました。丈夫で長持ち、飽きがこないように、縫製始末もしっかりさせました。
(写真はストッカーLの底部)
「マルシェバッグ」は、ストッカーシリーズを統合するようなモデル。お買い物に合わせて、収納を大きくとり、ストッカーを合わせて使っていただける設計です。
(マルシェバッグ)
「ピクニックバッグ」は、マルチカバーをバッグ化した設計です。アウトドアでパッと広げてテーブルクロスに使ったり、その上に拡げた雑多なのものまとめて持ち運んだり、腰かけても良いと考えています。お買い物の時も、持ち手が掴めるなら色んな対象に使えます(大き過ぎるとはみ出すかもしれませんがサイズを選びません)。
(ピクニックバッグ)
素材はオーガニックリネン
基礎となる糸は、オランダにある畑で作られたオーガニック・フラックス(リネンの原料植物)原料から紡績した糸です。フラックス(リネン原料植物)自体は基本農薬は必要としません。オーガニックと言っても問題は無いのですが、輪作をして他植物を栽培するため、畑自体はオーガニック認証が出来ません。しかしこのオランダ産原料は、オーガニック認証(GOTS認証)ために干拓地で単一的に栽培されています。
世界的に収穫量が極めて少ないこのオーガニックリネン糸を、複数を撚り合わせてキャンバスを織り上げました。撚り合わせることで、このリネン生地の強度を最大化するためにです。天然繊維の中でリネンは糸の強度が高いことが知られていますが、複数の糸を撚りあわせると更に強度があがります。これはweavearthの設計理念「Durabilty and Longevity(丈夫で長持ち)」に繋がっています。
また商品の仕上げは、織り上げた生地を化学薬品を使わずに基本的には水洗しか行っていません。オーガニックリネン生地には相応しい、オールドスタイルではありますが、素朴な素のままの味わい深い風合いになっています。
丈夫で長持ちするリネンバッグが、世代を超えて受け継がれていく…そういった思いを持って最終企画に到り、リリースすることになりました。
(22年10月追記)欧州(オランダ)産オーガニックリネンの原料が今後入手が困難になっています。現在の在庫が無くなり次第いったん販売を終了させていただく予定です。
末尾ではありますが、商品開発に協力を頂きましたNeoベジタリアン料理教室代表のericoさんはじめ多くの料理研究家の方々に深くお礼を申し上げます。ありがとうございました。
(大)