テキスタイルヘンプの歴史(国連が発行したレポート:Commodities at a Glance: Special Issue on Industrial Hempより)

テキスタイルヘンプの歴史(国連が発行したレポート:Commodities at a Glance: Special Issue on Industrial Hempより)

国連(United Nation)が、産業用ヘンプを知るためにレポートをまとめています。その中で、繊維として活用されてきたヘンプ(大麻)の歴史に触れています。その内容を翻訳してまとめてみます。

国連のヘンプレポート(出典)Commodities at a Glance: Special Issue on Industrial Hemp

(以下内容を抄訳)


カンナビス(ヘンプの原料となる植物)の栽培の歴史は旧く、約6000年前まで遡ると言われています。人類は歴史的に、材料(繊維や建材)、食品、医薬品や儀式に活用をしてきてます。特に東アジアの多くの地域文化では、この植物のあらゆる部位を使って、種子からは油をとっていました。

繊維(テキスタイルヘンプ)を取り出すために栽培していた歴史的な記録は、中国にあり紀元前2800年前のもの。古代エジプト文明、ヨーロッパでは銅器~青銅器時代から栽培され、その繊維は活用されてきました。

この植物は1500年代に南米(チリ)に導入され、その100年後には北米に伝わったとされています。

そして16~18世紀には、大航海時代に欠かせない帆布(船の帆につかう布)として、欠かせない繊維となります。

また国で紀元1世紀ごろにヘンプペーパーは開発され、19世紀まで、この植物は紙の生産にも広く活用されました。製紙産業にとっても、長い歴史の中で重要な農作物だったことが分かります(アメリカ独立宣言はヘンプペーパーに書かれています)。

以下写真出典はAlLiance for Linen and hempのHPからヘンプペーパーに書かれたアメリカ独立宣言。

19世紀後半から20世紀にかけて、船舶の動力が風からエネルギー(石炭や電気モーター)で自走することになり、帆布のヘンプ用途は減少します。

また産業革命はグローバリズムによる綿糸生産を推し進め、18世紀にその効率化を推し進めて、安く手に入りやすい綿布を大量生産が可能になりました。

1924年のアセテートを皮切りに、さまざまな化学繊維は丈夫で安価な原料を提供できることになります。

これらのことが、テキスタイルヘンプの需要を減少させる背景となりました。

そして20世紀初頭、一部の社会的・産業的利害関係者( some social and industrial interests)が、テキスタイルヘンプを含むすべてのカンナビスの栽培を禁止することを推進します。1935年にはアメリカのほとんどの州が栽培を禁止します(その後、カンナビス栽培禁止は世界各国に普及していきます)

近年、1990年代から各国でカンナビス栽培禁止が解かれています(オーストラリア(タスマニア)では1990年に、イギリスでは1993年に、ドイツでは1995年)。これは、収益性の高い新しい作物や天然素材を探すという一般的なニーズと、よりサスティナブルな製品を求める消費者の需要が拡がっているためです。

(抄訳ここまで)

 このレポートでは言及されていませんが、一部の社会的・産業的利害関係者( some social and industrial interests)というのは、おそらく米国の綿花産業ロビー活動の一つではないか?と言われています。

世界に拡がったカンナビス栽培禁止の経緯は、多くの場合マリファナへ結びつけられています。それも、もちろん大きな要因と考えられますが、近年の研究調査では、米国最大の繊維産業ロビー団体の一つである綿花組合の圧力があったことが否めないとされています。禁止された背景は多面的で、この経緯については、もう少し歴史的調査・研究が必要なところでしょう。

 

 

 

 

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